投資家がシードのピッチデッキに求めるもの
シードでは、問いが「洞察はあるか」から「実行できるか」へ移ります。投資家が見たいのは、チームが市場に入り、実際の顧客から学び、本当に使われる製品を作ってきたという事実です。
シードのデッキで、投資家が各セクションから読み取るもの。
シードでは、課題を実データで定量化すべきです。顧客ディスカバリーの知見、名前の挙がった業界ソース、あるいはファウンダーの事業運営経験。トップダウンの TAM ではもはやスライドは成立しません。投資家はボトムアップの SOM の論理を期待します。「X 社の顧客に $Y の価格で届き、SOM は $Z」。世界の特定の日付のある変化に紐づいた「なぜ今か」は引き続き必須で、この段階では検証可能であることも求められます。
シードでは製品が存在し、使われています。差別化は機能レベルではなく構造的でなければなりません。複利で効き始めた独自データセット、形成されつつあるネットワーク、独占的な統合、競合が容易に再現できない流通優位など。顧客のフィードバックが開発の形を目に見えて変えているべきです。強いシードのデッキは、直接・間接の競合を少なくとも 3 社挙げ、それぞれに対する説得力のある構造的なくさびを示します。機能主導ではなくマイルストーン主導のロードマップが勝ります。
シードでは、以前の会社での経歴より、この会社での実行の証拠が重要です。出荷され使われている製品、成約したエンタープライズ案件、採用し定着したチーム。いずれも「元 Google、元 McKinsey」より高く評価されます。チーム構成は今後 18 か月に事業が必要とするものと一致しているべきです。重要な機能が 1 つ欠けていても、名前の挙がった採用候補とタイムラインつきで明示的に認めていれば許容されます。認めていないギャップは総合スコアの上限を 65 にします。
シードでは、モデルは仮説以上のものである必要があります。このセクションで 6 以上を取るには、実際に払っている顧客が必須です。近い将来のパイプラインは対象外。最も強いシードのデッキは、実際のお金を払う実際の顧客(小さな ARR でも)、前提を名指しした方向感のある LTV/CAC の理解、検証と反復を経た価格設定を示します。粗利は、まだ精密でなくとも方向性とともに語られます。
シードでは、トラクションが主要な証拠です。採点は絶対値ではなく、具体性、正直さ、新しさ、軌跡で行われます。B2B なら、社名入りの有料顧客、ACV、ステージが記録されたパイプライン、初期のユニットエコノミクス。B2C なら、30 日リテンション、DAU/MAU 比率、オーガニックな獲得シグナル(紹介率、依頼していないインバウンド)が採点を担います。バニティ指標(エンゲージメントのないダウンロード数、登録数、SNS フォロワー数)は 3〜5 の範囲に収まります。説明のない 6 か月より古いデータは、このセクションの上限を 5 にします。
シードでは、少なくとも 1 つの獲得チャネルが仮定ではなく実証されているべきです。B2B なら、名前入りのリストを伴う具体的なアウトバウンドか、コンバージョンが記録されたインバウンド。B2C なら、オーガニックな増幅(紹介率、バイラル係数、SEO 順位、コミュニティのエンゲージメント)の証拠がある少なくとも 1 つのチャネル。CAC の推定値か比較対象を示すべきです。優先順位なく複数チャネルを並べると、「GTM は進行中の実験ではなく計画にとどまっている」と読まれます。
強いシードの調達額は、月次のバーンと人員計画の前提を持つ 18 か月のランウェイモデルに裏付けられています。資金使途はカテゴリ別(製品、セールス、オペレーション)に分解します。マイルストーンは活動ベース(「エンジニアを 2 名採用」)ではなく成果ベース(「NRR 100% 超で $1M ARR に到達」)であるべきです。そのマイルストーンが、次のシリーズ A の調達を明示的にディリスクするものであること。
シードのデッキは引き締まっているべきです。各スライドがその場所にある理由を持ちます。物語の弧は、課題、洞察、ソリューション、証拠、チーム、調達額。うまくいっていないことも含め、データは正直に提示します。デザインは過剰に作り込まずブランドを反映します。文字だらけのスライドと、順序立てられず寄せ集めただけのデッキが、ここで最も多い失敗パターンです。
シードの調達準備が整った状態とは。
シードの調達を止める、具体的なギャップ。
月次成長率がベースラインなしで提示されている。顧客 1 社から 3 社への「300% 成長」はノイズ。
シードの投資家は、絶対値から切り離されたパーセンテージの成長を隠蔽と読みます。速攻の見送り理由は「ベースラインと絶対値の軌跡を見せてください」で、計算を正直にすると成長が消えてしまう、というのがよくある答えです。
見出しの指標が顧客数で、売上への言及がない。
B2B なら、無償パイロットの利用を検証として位置づけているシグナルです。B2C なら、エンゲージメントのないダウンロードや登録のシグナルです。どちらの場合も投資家は「それより良いものが見せられない会社なのだ」と想定し、その想定はたいてい正しいのです。
6 か月以上稼働している製品なのに、チャーンへの言及がない。
この段階でチャーンを省略すると隠蔽と読まれます。リテンションに自信のあるファウンダーはそれを冒頭で示します。その問いを避けるファウンダーは、たいてい気に入らない数字を見ています。
チームに重要な機能上のギャップ(技術系共同創業者がいない、事業責任者がいない)があるのに、それを認めていない。
シードの投資家はギャップと、ファウンダーがそれをどう埋めているかを見ます。認められていないギャップは、否認か無自覚のどちらかを示します。いずれにせよ総合スコアの上限は 65 になります。
財務モデルがトップダウンのみ。「$1B の市場で 1% を取る」。
シードでのトップダウンのモデルは、ボトムアップのユニットエコノミクスの作業をファウンダーがしていないというシグナルです。シリーズ A の投資家はこの入力からリターンモデルを組み立てられず、シードとしても魅力のない賭けになります。
シリーズ Aの対話が始まる前に越えておくべき基準。
シードの「$0 から $500K ARR」の領域から、直近の成長がプラスの $1M+ ARR というシリーズ A の水準へ。数字だけでは足りません。ベースラインを明示した 10%+ の月次成長と、少なくとも 3 か月の一貫した軌跡が、ミーティングを取るための条件です。
CAC が記録され、新しいセールス担当が初日から回せるコンバージョンファネルを持つチャネルが 1 つ。シリーズ A では B2B の「ファウンダー主導」はレッドフラグです。セールスの型はファウンダーのものではなく会社のものである必要があります。
3 つ以上のコホートにわたるコホート・リテンション曲線。NRR 100% 超(エンタープライズ SaaS は 115% 超でマルチプルが評価されます)。シリーズ A では純粋なロゴ・リテンションだけでは不十分で、エクスパンションがモデルを証明します。
同じルーブリックで採点した、実際の例。
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